COLOR ZERO/前提要因

IMAGEとしてのKYOTO

「京都」と言えば、多くの人が思い浮かべるのは、世界遺産の神社仏閣と京町家で構成される京都の姿であり、佇まいでしょう。『京都の色』を取り上げるにあたっては、初めに、このようなイメージとしての京都を確認しておく必要があるでしょう。

『東京の色』は、東京という地域の中に内在する色彩要素の積層された姿であると言えます。ところが『京都の色』となると、単純に地域を特定することは困難です。

京都人にとっての京都は、人によっては平安京における「洛中」の概念であったり、豊臣秀吉が作った都を囲む土塁「御土居(おどい)」の内側であったり、「田の字」地区であったりします。(「田の字」とは、京都の商業・ビジネスの中心地として繁栄してきた四条烏丸を囲む、北は御池通、南は五条通、東は河原町通、西は堀川通の2キロ四方ぐらいの地域を指します)

『京都の色』とは、京都と呼ばれる地域に起因するものではなく、皆さんの心の中にある「イメージとしての京都」と重なることが求められます。

京都にも、ブランド・アイデンティティー(BI)を旨とする有名ブランドショップが進出していますが、その路面店の多くは「京町家」という京都の衣を纏っています。このことは、「京町家」が京都のイメージを体現していることを示唆しているように思えます。

そうであれば、『京都の色』、中でも京都の景観を構成する色彩は「京町家」からスタートしなければならないでしょう。

 

画像上段より「イッセイミヤケ」「Hervé Chapelier」「MarieBelle」

Paul Smith」



歳月/AGING

京都の景観色を語る際に確認しておかなければならない要素がもう一つあります。それは「歳月」です。1200年の古都のたたずまいは、千年を越える歳月が作り上げたものでしょう。

さらに、由緒ある神社仏閣の存在を背景に一年を通して開催される伝統行事や祭りに加えて、京都の人が守り続けるしきたりや生活習慣など、歳月が生み出した文化も、『京都の色』を支えているようです。



新しもの好き/ALTERNATIVE FACTS

日本で一番、パンと珈琲を消費する都市は京都であると言われますが、それだけでなく、バターやミルクの消費量も3位以内となっています。

和の文化の中心と言える京都で、パン食の比率が高いのは不思議な気がしますが、どうやら京都人は伝統やしきたりを重んじる一方で、新しもの好きな性質合理的な生活姿勢を持ち合わせているようです。日本初の、路面電車・本格的水力発電所・公立小学校制度・国際会議場などの整備は、このような京都人のもう一つの側面を表すものでしょう。

『京都の色』については、古都京都の景観を形成する色群に加えて、京都の生活文化を反映する色彩にも注目して行きましょう。